「ウォーフェア 戦地最前線」Warfare

A24『シビル・ウォー』アレックスガーランド監督作品。

イラク戦地で極限状況に置かれたアメリカ海軍特殊戦コマンド部隊の視点から無慈悲な戦争の姿を突きつけ、観る者の全神経を “震撼” させる熾烈な95分。

主要人物のドラマ性を排除し、戦地のリアルさを徹底的に追求、銃声が飛び交い、轟音が響き、怒号と悲鳴が飛び交う阿鼻叫喚、まさに極限状況のシチュエーション・スリラーと言う通り、逃げ場が無い空間での銃撃戦はスリリングで圧倒的なリアリティがありました。

聴覚と皮膚感覚が激しく刺激される反響音を異常なレベルまで再現した没入感ある体感サウンドは、タブレットやスマホで観ても、この映画の臨場感の醍醐味は伝わらないでしょうね、このサウンドによる立体サウンド演出は映画館でも音響効果が良い環境で観るべきです。出来ればDolby atmosでの鑑賞をお薦めします。

映画冒頭にインサートされる 「Eric Prydz – Call On Me」、ネイビーシールズたちのはっちゃけ感は、中2おバカ男子のようで微笑ましい。

戦場での緊迫感を極限まで緻密に構築しているだけに、冒頭シーンのチョイスは辛辣ながら巧妙です。

「コート・スティーリング」Caught Stealing

2026 BEST Movie 暫定1位!鬼才ダーレン・アロノフスキー監督 出演:オースティン・バトラー&ゾーイ・クラヴィッツ主演。

1998年ニューヨークの街並みを再現したセットデザインが秀逸で、90年代のグラフティアートや伝説のレンタルビデオショップ「キムズヴィデオ」やミュージカル「CATS」のバス広告、9.11で消えたワールド・トレードセンター ツインタワーなどオースティンバトラーが疾走し、当時の景観が流れる度に目が釘付けになります。チャイナタウンの中華レストラン、NYメッツシェイ・スタジアム、コニーアイランド、ブルックリンのブライトン・ビーチ、当時のN.Y.市の景色そのものが映画のメッセージ性を担っていて、この時代のN,Yの雑踏とクライムスリラーの親和性が実にマッチして相性が良いです、野球の小ネタや映画の名作オマージュが散りばめられているのも楽しい。

物語は、主人公ハンクが、友人から猫の面倒を引き受けた事で、ユダヤ人の殺し屋やロシア系のギャング等 ニューヨークの悪党マフィアに代わる代わる狙われ 裏社会の事件に巻き込まれていく、いわゆる巻き込まれ型クライムサスペンスで、登場するキャラクターはクセが強く暴力的、主人公ハンクに起きた過去のトラウマは、救いがない程 超絶陰惨過ぎる、恋人や知り合いが、次々と殺害され、絶望の淵に立たされるけれど、ラストは一発逆転ホームラン級の爽快感があり、鑑賞後の満足度は100%  映像も音楽もカッコイイし、最高に楽しい映画だったな。

ソール・バス風タイトルやエンドクレジットのデザインまでとにかくカッコいい!ダーレン・アロノフスキーのタイポグラフィセンスが素晴らしい!

 

『28年後…』白骨の神殿 28 Years Later: The Bone Temple

この映画、『28日後…』と『28週後…』のパンデミックシリーズの続編とされているが、『28年後…』「白骨の神殿」は、もはやゾンビ映画ではなくヒューマン大河ドラマへとシフトしている感じです。

28シリーズがゾンビ系映画と一線を画しているのは、登場する恐怖の対象は「ゾンビ=死者」ではなく「レイジ・ウイルス(Rage Virus)」の感染した病人である事を一貫して描いている点です、ジョージ・A・ロメロの「足を引きずる腐った死者=ゾンビ」ではなく、「レイジ・ウイルス(Rage Virus)」に感染した病人である事で、全力疾走出来るという設定が、足を引きずって襲ってくるゾンビの概念を覆し、恐怖演出を倍増させたのはグッドアイデア賞です。

『28日後…』の特異な点は、色々ありますが、資本主義を風刺したジョージAロメロが創造したゾンビ映画を再定義している点でもあり、『28年後…』で描かれる恐怖の対象は「感染者」ではなく、人間の「闇」の部分です、

これは、新型コロナウイル(COVID-19)に感染抑制するために、人間同士の交流を断絶された事で これまでは表面に現れていなかった人間の本質を目の当たりにし、 感情の中に渦巻く「許せない」感情の暴走は、怒りとなり 自分の考えに反する他人に対し、群れをなして暴力を振るっている象徴に見え、我々の住む世界と地続きで、危険な世界をより危うくする国のトップに従う国民の思想はカルト宗教的であり『28年後…』の隔離された世界観は 現代社会の未来に通じています。

そしてこのシリーズの特異性として、特筆すべき点は 映像美学の追求にあり、シリーズ通して、撮影手法の変遷は、映画の重要なファクターにもなっています断片的なニュースフィルや監視カメラの視点映像、iPhone撮影など シリーズ作品毎に撮影技術を変えた映画の配色はアートフィルムのようです。

そして 『28年後…』「白骨の神殿」は、もはや音楽映画です。今回 挿入される劇伴は UKを代表するデュラン・デュランナンバー、バブル世代にとって、涙が出るほど懐かしい存在です。ニューロマンティックな甘いサウンドとパンデミックな終末世界のマッチングは素晴らしいですね。

そしてケルソン医者が悪魔崇拝Jimmysの為に選曲したアイアン・メイデン『魔力の刻印』The Number Of The Beast。

メイデンを知らないjimmysのリアクションが実に素敵です。

666 the number of the beast 666 the one for you and me 

 

「アグリーシスター可愛いあの娘は醜いわたし」. Den stygge stesøsteren

監督, エミリア・ブリックフェルト

物語は誰もが知る”シンデレラ”が登場するおとぎ話…でも主役はシンデレラではなく義姉エルヴィラ。

美醜をテーマに、昨今のルッキズムを徹底的に風刺した北欧発のゴシックボディホラームービー。

主人公のエルヴィラを演じるリア・マイレンはノルウェーで女優とモデルをされてるとの事ですが、映画の予告編を見ていてタレントのベッキーに似てるなと思っていたけど、本編観てもベッキーにしか見えないぐらいマジに似ています。

主人公エルヴィラの美に囚われたおぞましいイタいフェアリーテイルぶりは驚愕すぎて、ここまで来れば その努力を賛美したいです。外見至上主義の価値感にザクッと切り込んだテーマとゾッとするほど美しい視覚演出が素晴らしい映画でした。

ゴシック系の雰囲気がとてもアート的で、美容のプロが薦める究極のサナダムシ美容法など見どころ満載です、私が好きなシーンは、シンデレラが舞踏会に着ていくドレスをお蚕さんたちがせっせと編んでいく場面ですが、お蚕さんたちのビジュアルがあまりにもそのままで、とても健気で微笑ましかったですね。

おとぎ話の「シンデレラ」は、物欲の幸福は手に入れたけど、性格や思考、人間性を知らない、好きでもない王子様と結婚して、本当に幸福な人生を送れたのだろうか?…,

…..と言う疑問に答えるように、女であることを幸せに生きるために、男に頼らず生きていける 女性の生き方を選択した義妹が、母親と決別する映画のラストは、フェミニズムを彷彿する真のシンデレラストーリーの予感を感じました。

今作品はボディホラーと言うジャンル映画ですが、美醜、ルッキズムを捉え直す他に、性別にもとづく偏見や、男女雇用・賃金格差といった経済的不平等のジェンダー問題も扱った優れた傑作です。